キャッシュが残る経営

商売をやっていると、いい時も悪い時もあるわけです。

「上り坂」、「下り坂」、そして「まさか」とも言いますが、今回の新型コロナなどは正に「まさか」そのものです。

長い間お店をやっている人から「本当はもう店を畳みたいのだけれど、借入れがあるので閉めるに閉められない」というお話を聞いたことがあります。

店でも会社でも、営業しているうちは自転車操業で何とかなるけれど、止まった瞬間に倒れるというわけです。

親の代から鉄工所を経営していた人がいるのですが、年々売上が減っていき「ここらが潮時」と廃業を決めました。

この人の場合はラッキーなことに土地が自前で、これをマンション用地として売却し、さまざまな債務を整理したあとも手元に現金が残りました。

おかげで老後の目途が立ったとのことです。

サラリーマンの場合は定年退職という区切りがあり、いい悪いは別として「終わり」を意識して働けます。

が、経営者や自営業者は、自分で「終わり」を設定しておかないとズルズルとそのままいってしまうことが多いのです。

それが楽しければいいのですが、赤字が続いたり、多額の借入れがあったりしたのでは、働いていてもちっとも面白くないわけです。

普段から身軽な経営を心掛けておかないと、「まさか」が来た時ひとたまりもないし、逆に“やめよう”にも“やめられない”ピンチに陥ります。

急拡大路線や売上第一主義は、経営者が自分に酔っているだけで、酔いがさめたら大変な事態になっているかもしれません。

小さな会社には小さいなりのメリットがあり、市場の変化にすぐに対応できたり、固定費が低いので生き延びやすかったりします。

売上よりも利益の方がずっと大切で、もっと言えば「キャッシュが残る経営」こそ目指すべき方向だと思うのです。