「好き嫌いで物事を判断してはいけない」というのは、ごく真っ当な意見だし、私もずっとそう思い込んできました。
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が、本当にそれが正しいのかどうかがよく分からなくなってきました。
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今の私なら「好きなことしかしない」、あるいは「嫌いなことは一切しない」と断言できるからです。
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私自身が年齢を重ねてきたからかもしれないし、時代がそういった方向に向かっているからかもしれません。
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「仕事なんだから、嫌なことも我慢すべきだ」というのも、ひょっとしたら思い込みの一つなのかもしれません。
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人が嫌がることを我慢してやり抜いてこそ、仕事に厚みが増すし、自分も成長できるのは間違いがありません。
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が、これも今の私なら、そもそもイヤな仕事に就くこと自体が、最初から間違っているという感覚なのです。
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あれだけ頑張った30代をちょっぴり誉めてやりたい気もしますが、随分と時間も体力も浪費したことも確かです。
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家庭を顧(かえり)みることもなく、いったい何のために働いてきたのか、今となってはちょっとよく分かりません。
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30代の頃の私の手帳は予定で真っ黒でした。
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しかしながら、間違った努力も相当してきたように思います。
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66歳の私は30代の自分よりも年収も資産も多いし、健康体という意味では、3ランクくらい上の感じがします。
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頭も今の方が圧倒的にいいという自覚もあります。
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「好き嫌いで仕事をしない」30代の私よりも、「好きなことしかしない」60代の私の方が、すべての面で圧勝しているのは不思議だし、そうなると30代の私があまりにもかわいそうな気がしてくるのです。