戦時中、私の母は中学生くらいでした。
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その時に、父親が新聞社に勤める友だちがいて、その子が「今度の戦争は、どうも日本が負けるようだ」と言ったとのこと。
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それを聞いた母は「絶対にそんなことはない」と強く否定したそうです。
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毎日「大戦果あり」の放送を繰り返していた大本営の発表を信じていたからです。
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自分たちに不利なトンデモない情報を聞くと、それを受け入れることができず、全面的に拒否反応が出るのが普通なのかもしれません。
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1989年を頂点とするバブルの最中、私はある不動産会社の経営者と食事をしました。
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その人が「もうすぐバブルがはじけ、大倒産時代がやってくる」と言うのです。
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なにせバブルで浮かれ切っていた時代だったので、俄(にわ)かには信じられませんでした。
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ものすごくよく勉強している人だったので、私もその人のことを尊敬していたのですが、バブル崩壊の話だけは信じることができませんでした。
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その時にイタリアレストランに連れて行ってもらっていたのですが、話があまりに衝撃的だったので、料理の味がしなかったことを覚えています。
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それから数カ月後、その人が言ったとおりに、日本経済がガラガラと崩れていきました。
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私にはその音が聞こえたほどです。
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不幸の予言は誰も聞きたくないわけですが、それを聞いて対策を練っておけるぐらいの余裕を持っていたいものです。
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あまりに全力でバブルに乗っていると、途中で降りられなくなってしまいます(経験済み)。
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また会社を大きくし過ぎていたり、借入れが過大だったりする場合は、自分の意志だけでは止められないことも少なくないのです。
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「銀行に見放されたら倒産」とか「社員が(大量に)辞めたら崩壊」とかいった状態だと、いつもビクビクしておかなければなりません。
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その点、無借金だと前者の心配はないし、家族経営だと後者の不安もありません。