経理のシンプル化

営業畑出身の社長は、得てして経理が苦手です。
P/Lのみに関心があり、B/Sには興味がありません。
しかしながら上場するなどして、会社がある一定規模以上になると、経理や財務に無関心でいるわけにはいかなくなります。
稲盛和夫さんは技術畑出身の方ですが、その著書を読むと、徹底的に経理の勉強をされたことが書かれています。

私は10年ほど前に、ある税理士の人が書いた経理の本を読み、目からウロコの体験をしました。
ひとことで言うと「経理業務に出来るだけ経費をかけるな」ということです。
経理業務というのが、社長にとって一種のブラックボックスとなっていて、よく分からないままに余分な人員や経費をかけているケースが多いのです。

過去の売上や利益をいくら上手く帳簿化しても、キャッシュや儲けが一銭でも増えるわけではありません。
少ないコストで正確な数字を知ることが「経理」の役割なのです。
しかしながら「経理」の数字は、経営判断のためにはどうしても必要なものでもあります。

銀行用や税務署用など、何種類もの財務諸表を作っている会社もあるかもしれませんが、そんなことをすれば自分の頭が混乱するだけです。
経理の数字の乱れは、経営本体の乱れにもつながります。
例えば東芝のような大企業でも、経理の数字をいじろうとして経営危機にまで陥ってしまいました。

シンプルな生活は快適ですが、経理だってシンプルに越したことはありません。
手形を切ったり、多額の借入れを行ったりすると、途端にシンプルさが失われます。
経理には「キャッシュ イズ キング」という言葉があるのですが、すべてキャッシュを基本に考えるべきです。
例えばバランスシートの左側(「借方」とも言います)に、売掛金や商品在庫や受取手形が多数あったとしても、これらはキャッシュにならない限り資産ではないのです。

多額の借入れがあったり、顧客を銀行から紹介してもらったりするなどの特殊なケースがある以外は、取引銀行は1行で十分だと思うのです。
現に当社は1行としかお付き合いがありませんが、何の支障もありません。

先日『会社のお金は通帳だけでやりくりしなさい』という本を読みました。
小さな会社の場合は、確かに「通帳」だけで十分管理が可能のような気がします。
これを実践していくと、経理業務がもう一段シンプルになりそうです。