『相続6つの物語』

資産税専門の税理士でもある、著者の本郷尚(ほんごう・たかし)さんご自身から『相続の6つの物語』という本をいただきました。
私は小説などのフィクションはあまり読めないのですが、この本はスッと読めてしまえ、かつ身につまされる話が書いてありました。

「資産を自由に使って楽しく生きる『自遊自財』」がこの本のテーマです。
6つの話からなりたっていて、すべて実話が元になっています。
色々な登場人物が出てくるのですが、相続に成功するには「いかに執着なく不動産を売却するか」が極めて大事だということがよくわかりました。

この本の中の一つのお話です。
ある上場企業の役員までやった人が退社し、暇を持て余すようになりました。
現役時代は休日まで接待ゴルフで潰れていたのに、普段から何もやることがなくなってしまい、次第に毎日が不機嫌に。
妻はそんな夫を持て余しだし、働きに出ることにしました。

夫の退職後は収入が激減し、毎月預金を取り崩して生活する状態になりました。
預金は8,000万円もあるのですが、収入がないということがこれほど不安感を高めるとは思いもしなかったようです。
思いあぐねた結果、庭付きの一戸建てを売却し、駅近の小さなマンションを購入することにしました。

その差額分が軍資金として積み増すことになり、夫婦そろって気持ちが前向きになりました。
夫は元上場会社役員というプライドが邪魔して働き口を見つけようとしなかったのですが、気持ちが前向きになり、また働くことへの意欲が高まってきました。
金融資産に余裕ができたので、夫婦そろっての海外旅行も行けるようになりました。

また別の物語です。
老いた母親が高級老人ホームに入居することになり、広い自宅が空きました。
息子は2人おり、兄は「土地は売るものではない」と賃貸住宅を建てることを検討します。
一方、アパート経営の厳しい現実を知っている弟は売却を主張。

教職の道を進み、校長までやった兄ですが、世間が狭く、頑固でもあるので、なかなか自分の意見を曲げません。
が、すったもんだのあげく、最終的には土地を売却することになりました。
結果、不動産の現金化は、みんなに幸せをもたらしました。
もし仮にアパートを建てていたら、賃料の下落リスクと、共有リスクとでどうしようもなかったところだったのです。