自分をゆるし、自分をほめたたえよう!

仏教の言葉で「上求菩提・下化衆生(じょうぐぼだい・げけしゅじょう)」というのがあります。
ひとことで言うと、前者は「自分を向上させる」ということで、後者は「困っている人たちを助ける」ということです。
この2つの方向は全く逆になるので、エネルギーを分散させることにもなるし、一体どうしたらいいのか分からなくなります。

私自身は上昇志向が強いので「上求菩提」の方はクリアしやすいのですが、「下化衆生」はどうも苦手です。
自分を高めることには関心があるのですが、人に手をかけて一つ一つ教えていくなどという辛気(しんき)臭いことはできないのです。
従って「自分は水臭い人間だ」とか「自分には愛が足らない」などと、そのことを引け目に感じていました。

が、ふと「今世(こんぜ)自分が生まれてきたのは魂を磨き高まるためだ」という気がしてきたのです。
つまり、それが今世の「やるべきこと」であり、もっと言えば使命でもあるのです。
ということは、その方向に気持ちもエネルギーも集中していけばいいわけです。
自分がワクワクすることに取り組むべきであって、苦手なことに時間を使っているほど人生は長くはないということでもあります。

イチローは自分のために野球に打ち込んでいます。
つまり「上求菩提」だけの世界であって「下化衆生」なんて“これっぽっち”も考えていないに違いありません。
が、結果としてイチローは日本人全体に喜びと誇りをもたらしています。
十分に「下化衆生」になっているわけです。

自分の心の奥から湧き出す声に耳を傾け、素直にその方向に進めばいいわけです。
自分が「得意とするもの」や「ワクワクすること」に集中すればいいだけの話なのです。
だからそれ以外のことに冷淡な自分や、苦手なことを嫌がる自分に嫌悪する必要は全くないのではないでしょうか。

人はみな欠点だらけです。
しかし長所が大きければ短所は単なる愛嬌に見えてしまうのです。
自分の短所を嘆く暇があったなら、少しでも長所を伸ばす努力をすべきだと思うのです。
そう考えると随分気持ちが楽になってきました。