テレビ人間と活字人間

活字の世界で有名な人と、テレビで有名な人とが必ずしも一致するとは限りません。
以前に“ある経営勉強会”で「長谷川慶太郎」を知らない人がいたことに驚いたのですが、その時私は「壇蜜」を知らなかったので逆にビックリされました。
テレビ人間と活字人間とでは、かくほどに違いがあるのです。

若い頃は有名になりたくて仕方がない時期があります。
一生懸命やっているのを認められたいという気持ちもあるし、自分の才能を誇示したいという欲求もあります。
有名になる一番手っ取り早い方法は、テレビに出ることです。
ふつう、一般人がテレビに出ることはないので、ちょっとメディアで持ち上げられたりすれば、ついつい有頂天になってしまいます。

が、世間的に有名になるのはリスクがあるのです。
有名税」という言葉もあるぐらいで、芸能人や政治家以外は有名になることを目指すべきではないと思っています。
ホリエモンだって、あんなに派手にメディアに登場さえしなければ、あれほどの反動は来なかったと思うのです(刑務所まで入れられてしまいました)。
メディアに持ち上げられ“いい気”になっていると、何か具合が悪いことがあった時、寄ってたかって足をと引っ張られるいうことになりかねません。

テレビなどで世間的に顔が売れると、このようなリスクが大きいのですが、逆に本の世界で有名になるのは問題が少ないように思うのです。
いわば市場が違うというか、顧客層が違うというか、要は構成メンバーが別人(別人種)なのです。
読書階層の人たちに名前が売れると、知的生活のためには何かと便利なのです。

本を読む人は限られています。
ジニ係数というのがあり、これが酷(ひど)くなると「10%の人が90%の資産を占めている」などという現象が起こるのですが、仮に「知的ジニ係数」というのがあるとするなら、どこの国でもかなり数値がイビツになっているのではないでしょうか。
知的階級とそうでない階層の二極化が起こっているのです。

日本人は外国と比べると良い大型書店も多いし、比較的よく本を読む国民だと思います。
が、そんな日本でも本を読む人と読まない人の差が、かなり大きくなってきているのではないでしょうか。
同じ新入社員でもコツコツと本を読んでいく人と、全く読まない人とでは、長い歳月の間には明らかな差が出てくるのは避けられません。

「本を読む」が「仕事ができる」と直結しているとは言えず、ましてや「金儲けが上手い」とは無関係に近いような気がします。
しかしながら私は本の世界で頭角を現したいと思っています。
なぜなら本の世界の魅力を知っているからです。
本の世界で大きな顔をしていたいと思っているのです。