失敗体験でノウハウの蓄積

株のことばかりに意識や時間を取られて、本業が疎(おろそ)かになると本末転倒です。
従って一度株を購入したら、買ったことも忘れようと思っていました。
しかしながら今回、アベノミクス効果で株価がスルスルと上がった際、一度「利食い」なるものをしてみたいという誘惑に駆られました。
所有する株をこのまま維持するのか、それとも売却して利益を確定するのかの判断にも、けっこう難しいものがあります。
買った株価よりも下がると鬱陶(うっとう)しいのですが、株価が上がったら上がったで悩ましい問題も出てくることを体験しました。

以前から持っていた銘柄のうち、半分は売却し、半分は売らずに手元に残しておくことにしました。
売却によって、いくつかのメリットを得ました。
売却益が出た(つまり儲かった)というのも、もちろんメリットの一つなのですが、含み損を抱えている株も一緒に処分することができ、これが精神的には一番スッキリしました。

所有していた株も20銘柄近くに増えてしまっていたので、これらを4〜5銘柄に減らせたのもよかったのです。
常に整理整頓を心掛け、その精神的効用を十分に理解しているつもりだったのですが、株の整理にも同じような効果があることに気がついたという次第です。

話には続きがあり、株を売却したのはいいけれど、今度は手元に入ってきたキャッシュをどう扱ったらいいのかが分からないのです。
そのまま超低金利の定期預金にするのも能がないし、銀行さんも大して喜びません。
普通預金に置いているだけでは、逆にどうも落ち着かないのです。
そこでまた株を買ってしまいました。
結論から言うとこれが失敗で、後から買った株に含み損が出てしまっています。
配当利回り重視なので、上がろうと下がろうと別にいいのですが、やっぱり気になるわけです。

株のことわざに「買う、売る、休む」という言葉があります。
この「休む」というのがひじょうに大切なのですね。
不動産でもバブルの時に、売って利益を出すことはあるのですが、その快感が忘れられずに、必ずまた買ってしまうのです。
しかも借入れを倍にしてまで買うわけですから、バブルが弾(はじ)けると途端に破綻の道を歩み始めるという次第なのです。

不動産業でそんな例を山ほど見てきているのに、株になるとよく分からなくなってしまっていました。
これもまた今回の大きな教訓の一つでありました。
致命的な失敗をしてしまうと、もう立ち上がれなくなりますが、小さな失敗は次へのノウハウとして蓄積できます。
株の世界では「損切り」の大事さを口を酸っぱくして言うのですが、結局これは「致命的な失敗」を「小さな失敗」に留(とど)める効果があるということなのでしょう。