日本の富裕層

日経ビジネスで「富裕層の正体」という特集があり、非常に面白かったのです。
どういった分野に富裕層が一番集まっているかを取材した記事なのですが、結論から言うと「経営者、開業医、地主」に富裕層が集中。
そしてその消費は意外なほど質素というものでした。

あるボロボロの社屋の会社は、見かけとは違い中身は超優良企業。
その会社の得意技は、あるセキュリティー機器の特殊な電子回路の製造です。
極めてニッチな市場を長年独占し、原価3万円の製品を30万円の卸値で出荷しているとのことです。
会社はみすぼらしいし、経営者の生活も実に質素なのです。

「超」儲かっているのに、なぜそういったことをしているかの理由は3つあります。
まずは「うまみのある市場を世間から隠すこと」。
ライバルが参入してくると一挙に利益率が低下します。
少なくとも粗利益率9割は維持できるわけがありません。
また仮に大手が参入してくると、あっと言う間に市場が奪われてしまいます。

理由の2つ目は「取引先からの値引き要請への予防線を引くこと」。
そして3つ目が「税務署に“痛くもない腹”を探られないため」であります。

人知れず高収益な事業を個人経営し、地道に資産を蓄積していく…これが日本の富裕層の典型的な姿の一つなのだそうです。
中小企業というのはピンからキリまであるのですが、こういった典型的富裕層は大企業よりも中小企業の経営者に多いに違いありません。
またこういった富裕層を輩出するゾーンがあり、ITやニッチ製造業がそれに当たります。
もっと細かく言うと、特殊用途の運搬車両や食品機械、防災用品、包装機械とのことです。

こういった経営富裕層の多くは「余暇よりも仕事。自社を優れた会社にするための情報収集にはカネと時間を惜しまないが、それ以外のことにはあまり関心がない」のであって、従って衣食住を始め、生活は驚くほど慎ましいという傾向があるようです。

これに対して開業医富裕層は高級車が好きで、ここは経営者富裕層と違うところ。
ただそれ以上の贅沢をするかと言えば、そうでもないらしいのです。
「まともな医者なら、個人的な消費に回すカネがあれば、医者の確保や医療設備の投資に回したいと皆思っている」という大型病院を経営する開業医の意見に集約されるように、意外にこの層も大型個人消費は行わないのです。
ちなみに開業医の富裕層輩出ゾーンは、美容外科や眼科に集中するとのことです。

地主富裕層の場合も、個人的な消費への関心よりも、地域の活性化の方に目が行っているケースが多いのです。
こうしてみると、日本の富裕層の場合は「まず仕事」であり、個人的な消費(ぜいたく)は傍(はた)が思うほど行っていないという現状のようです。

いずれにせよ、日本の富裕層の2人に1人は「経営者、医師、地主」の3大職業によって占められ、一般的に富裕と思われている公認会計士、弁護士、議員、著名人はいずれも2%以下しかいないとのこと。
こういった調査結果から学べることは「まずは仕事優先であり、たまたま富裕層輩出ゾーンで働いておればラッキーだし、もしゾーンに入っていなければ、お金のことは気にせず働くべし」ということではないかと思うのです。