企業理念をもう一度考える その2

「不動産活用と能力開発で、世の中に活力と繁栄をもたらす」が当社の経営理念なのですが、要は「不動産」と「人」の本来持つ能力を存分に発揮させるということでもあります。
このうち不動産に関する分野は30年間やってきたのですが、今後は「人」の能力開発にも力を入れたいと思うのです。

プロ野球に入る選手というのは、技術や体力は群を抜いています。
特にドラフト1位で指名される選手というのは、その時点で誰がどう見たって将来有望なわけです。
しかしドラフト1位の選手がプロに入って必ず活躍するかといえば、そんなことはないのです。
ひっそりと姿を消す選手も少なくありません。

プロになってから伸びる選手と伸びない選手の一番大きな違いは、やはり「意識」の点にあるのではないでしょうか。
野村克也元監督は、選手としても優秀でした。
しかし元々の素材は、プロ選手の平均以下だったのではないでしょうか。
現に若い頃、一度クビになりかけているのです。

野村克也選手の肉体的な努力は、当然スゴイものがあったと思うのですが、この人の場合「頭」を徹底的に使ったのです。
「カウント・ワンツーの時に、次はどういうボールが来る確率が高いか?」など、今まで誰も考えたことがなかったことを追求しました。
「野村データ野球」と言われるゆえんです。

また「心」の部分にも光を当て、有名な「野村ノート」の大部分は、この心の分野のことが書かれているように見受けられます。
従って「野村ノート」は会社での研修にも十分活用できる代物だという気がします。
坂村真民さんの「念ずれば花ひらく」にまで言及しているとのことで、「野村ノート」の精神的深さはかなりのものがあるのではないかと感じます。
いわば哲学の集大成であると言っても過言ではないのではないでしょうか。

話は少し変わるのですが、クラウゼビッツの『戦争論』は技術書ではなく哲学書であることが、渡部昇一先生の『ドイツ参謀本部』を読めばよく分かります。
「戦争は政治の一手段」でもあるので、闇雲(やみくも)に戦うだけではいけないわけで、きちんとその善後策を考えておかなければならないわけです。
クラウゼビッツの戦争論に影響を受けたモルトケが作戦を立案し、対デンマーク、対オーストリア、対フランス(普仏戦争)に次々と勝利していきました。
当時のフランス軍にはジョミニの『戦争概論』が普及していたのですが、これは技術論。
普仏戦争の結果は「哲学が技術論を駆逐した」ということでもあるのです。