IT企業の球団所有

プロ野球の球団経営で黒字のところは、阪神と巨人だけだと読んだことがあります。
他は多かれ少なかれ皆(みな)赤字ということで、その負担が大きすぎると、売却ということにならざるを得ないわけです。
本業が好調のうちは「広告費」だと割り切ることができますが、具合が悪くなると、そうも言っておられなくなります。

今回横浜ベイスターズを「ディー・エヌ・エー」が買い入れることになりました。
携帯電話向けのゲーム「モバゲー」が主力商品で、会社も商品も15年前には影も形もありませんでした。
ソフトバンク楽天など、同じIT関連会社が一足先に球団を所有しています。
ソフトバンクは日本一に手が届きそうなところにいますが、楽天はイマイチ。
横浜ベイスターズも余程のことがない限り、優勝争いに絡んでくるのは難しい状態であります。

ディー・エヌ・エー」の財務状況を四季報で見てみると、有利子負債はゼロ。
つまり借金はありません。
また利益剰余金は630億円ほど。
よくまあ会社設立からわずか12年ほどで、これだけの業績を上げたものです。
球団を所有するメリットは、NHKでも堂々と会社名を流してもらえること。
抵抗感なく、お茶の間に浸透するわけです。

球団買収のニュースが出ると「ディー・エヌ・エー」の株価は下がりました。
野球ファンと携帯ゲームのユーザーはズレていて、相乗効果はないと市場は判断したのかもしれません。
私の偏見を言わせてもらうなら、そもそも携帯ゲームが社会的にどのような意義を持っているのか自体がよく分からず、それでいて年間300億円もの利益を上げていることも理解に苦しむところです。

球団オーナーの先輩であるソフトバンクの財務内容を覗(のぞ)いてみると、有利子負債は何と約2兆円。
桁が違い過ぎて圧倒されてしまいますが、要は気が遠くなるほどの借金ということです。
1,000億円ぐらいの利益は確保しているようですが、横波が来ると危険極まりない財務状態だという気がします。

一方、楽天の有利子負債は約4,000億円。
過去の利益の蓄積を示す利益剰余金は300億円のマイナス。
この数字だけだと「継続疑義」や「重要事象」が注記されてもおかしくないぐらいです。
従って、こと財務バランスに関しては「ディー・エヌ・エー」がITの先輩企業よりもずっといいということになります。