経営を考える

会社を20年間経営してきて、3,000万円の借入が残っているという人が、仮にいるとします。
3,000万円の定期預金なら分かるのですが、20年も働いてきて借入だけが残っているというのは、ちょっと寂しいのではないかと思うのです。
そんな時に地震でも来て、会社の営業が出来なくなったら、途端に大ピンチに陥ります。

不動産業でも「賃貸オーナー業」や「分譲業」は借入れが必要かもしれませんが、「仲介業」や「管理業」は借入れの必要のない業種です。
売上の調子がいいと、ついつい安易に借入れをしてしまいがちです。
会社というのは、手形を出さず、借金れがなかったら、そうそう潰れるものではありません。

ある地方で化粧品販売の代理店をやっている”やり手”の女性経営者は、毎月の売上がいいものだから、銀行がいくらでも貸してくれるのです。
そしてその借り入れで何をしているかと言えば、地方の不動産を購入。
私から見れば「ボロ不動産」ばかりで、売却するときは二束三文ではないかと思うのですが、本人にしてみれば、所有不動産が増えていくことが「頑張った証(あかし)」ということなのでしょう。

会社のB/Sを見るときに、一番簡単な見極め方法は「流動資産」と「流動負債」とをみることです。
ひと言で行ってしまえば、流動資産が流動負債に比べて大きいところは、財務的には安心です。
逆だと、ちょっと心配。
借入れが不動産や債券や商品に化けているところは、資産がいくら大きいからといって安心は出来ません。
不動産や債券は含み損を抱えている場合が少なくないし、商品は売れずに困っている不良在庫かもしれないからです。

不動産業界でも、私が若いころから知っている人が、5名ほど会社を上場させています。
いずれも図抜けて仕事が出来る人たちです。
しかし今、その5社のうち4社が債務超過
うち2社は「継続疑義」がついています。
こんな優秀な人たちでも、上場してまでピンチに陥(おちい)るのかと思うと、一体経営とは何だろうと考えてしまいます。

本業がイマイチの時でも安定して収益を上げてくれる収益物件を持つことは大事なことです。
しかしこれは長い時間をかけて少しずつ増やしていくべきもので、短期間に一挙に増やそうとすると、資金繰りが悪化してバランスを崩してしまいます。
時間をかけて、その間にノウハウも蓄積させながら進めていくのがコツでもあります。