歴史の分岐点 1989年

1989年という年は、今から振り返れば、近年における歴史の分岐点でした。
国内で言えば、まずは年号が昭和から平成へ。
年末に日経平均が38,915円という最高値をつけ、バブルのピークの年としても記憶されます。
また、この年に消費税が導入されています。
しかしながら消費税が導入されてから日本はずっと不況。
景気を良くするには消費を喚起しなければならないのに、消費税はそれを抑える方向に働きます。
消費税で税収を増やそうという目論見だったのですが、景気を後退させることで、逆に税収を減らしているのではないでしょうか。

1989年には時代を代表する人たちが何人もなくなっています。
昭和天皇が1月7日に87歳でお亡くなりになりました。
松下幸之助手塚治虫、そして美空ひばりという、各界で超一流の人たちも亡くなっています。
松下幸之助の94歳は天寿を全うしたという感じがしますが、手塚治虫は62歳、美空ひばりに至っては52歳という若さ。

国際的な大事件が、この年には2つもありました。
一つは天安門事件
「放水車を用意していれば、あんなことにならなかったはずだ」と言った人がいたのですが、私も同感。
いずれにせよ、この事件で中国は世界から非難を浴び、大きくイメージをダウンさせました。

もう一つがベルリンの壁の崩壊。
これは本当に大きな意味を持った事件でした。
政治的には「冷戦の終結」。
この事件を機に、ドイツは統一され、ソ連は崩壊しました。
フランス人のジョークです。
「自分はドイツが好きなので、1つよりも2つある方がよかったのに」。
経済的にも大きな意味を持った年でした。
それまでの経済はずっとインフレだったのに、それ以降デフレに変わったのです。

今まで世界の経済活動に参加してこなかった東欧などの、かつての社会主義国の安い労働力が、資本主義社会にどっと流入してくるわけですから、デフレへの圧力が強まったわけです。
これがミクロの企業経営にも影響を与えているわけで、経営者がいつまでも「インフレ・マインド」だと経営を大きく見誤るのです。

1989年から20年が経ちました。
1989年に転換した流れが今なお影響を与えています。
この20年間には、ソ連の解体、EUの拡大、中国の台頭などの動きがありました。
日本は「失われた10年(もしくは15年)」を体験し、長い間苦しんできました。
しかしそれがゆえに、今回の世界金融危機では比較的キズが浅くすんでいます。
また日本には技術力もあります。
例えば今、日本の新幹線方式が世界的に採用されつつあります。
新しい大型原子力発電所を建設する技術力は、世界で三菱、日立、東芝の3社だけが持っているとのこと。
日本はもがき苦しみながらも、静かに実力を蓄えてきた20年だったのかもしれません。