B/S経営を考える その1

私は今56歳ですが、35歳まではずっとインフレ、それ以降はずっとデフレの時代が続いています。
分岐点は1989年11月9日のベルリンの壁崩壊。
後世の歴史の教科書で必ず出てくる出来事ですが、その意味するところは、政治的には「冷戦の終結」、経済的には「インフレ時代の終わり」でありました。
当時の日本はまだバブル経済で、儲ける方に忙しく「ベルリンの壁崩壊」の重要性には気がつきませんでした。

デフレ時代の経営は「売上よりも利益」であり、「多くの社員ではなく、少数の社員」です。
多くの資産をもった会社ではなく、キャッシュ・フローのいい会社。
「増収増益」は経営環境がたまたま良ければ成り立ちますが、「減収増益」は経営力の高さを意味します。
インフレの時代は、どちらか言うとP/Lが重視されてきたのですが、これからの時代はB/Sに重点。
一言で言うとP/Lは攻撃力を、B/Sは守備力を表しているのではないでしょうか。

経常利益が即現金にならないのは、B/Sのどこかがおかしいのかもしれません。
売掛金受取手形がいくら増えても、キャッシュ・フローはよくなりません(不動産業界にはこの2つともありません)。
また利益が、棚卸資産や土地・建物に姿を変えていても、現金は決して増えません。
B/Sの左側は「資産の運用」を表し、右側は「資産の調達」を表します。
左側には例えば「商品」や「有価証券」や「仮払金」や「建物」や「車両」や「備品」がずらりと並ぶのですが、これらを一度チェックしなおし、ムダなものを処分すべきなのです。

つまり売れるものは売り、損切りするものは損切りする。
左側の総資産のところを圧縮すると、キャッシュが会社に残りだすのです。
もし借入金があるなら返済へ。
なければ「まさか」に備え、現預金で蓄えておくべきなのです。
キャッシュが分厚いと、少々の不景気では会社はつぶれません。
「総資産」を削ると、借入金への返済資金が生み出されるし、「総資産」管理のための経費の削減ができます。
すなわち人件費や地代家賃や修繕保守費や保険料などのカットが出来るわけです。