渡部昇一先生の書庫の写真を初めて見ることが出来ました。
80歳近くになって、わざわざ蔵書のために引っ越しまでされているのです。
その数15万冊。
渡部昇一先生は英語の専門家なので、英語の貴重本も多く所蔵されているようで、世界の古書学会の会員の「プライベート・ライブラリー」と比べても、全く引けを取らないようです。
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プライベート・ライブラリーを持つ人は、ヨーロッパだと貴族が多く、アメリカでも単なる成り金だと読書とは相いれがたいので、プライベート・ライブラリーの所蔵自体、洗練された趣味と教養を意味しているようです。
渡部昇一先生は若い頃、先輩の教授たちを観察していて、定年後も次々と論文や本を出していく人と、そうでない人がいることに気づきました。
そしてその二者の違いは「定年後も本が手元にあるかどうか」にあると喝破しています。
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渡部昇一先生は80歳の今でも毎月のように新しい本を出版しています。
その源泉はまさに「手元で活用できる本」とのこと。
渡部昇一先生の師匠は高校時代の恩師佐藤順太先生で、ご本に何度もそのお名前が出てくるので、私も名前だけはよく知っています。
その佐藤順太先生は庄内藩の上級武士の家の出だそうです(これは初耳)。
若き日の渡部昇一先生は、この佐藤順太先生の自宅で初めて本格的な書斎を見て大いに感激し、それが学問を志すきっかけになったとのこと。
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武士の生活は質素なのですが、一つだけいくら贅沢をしてもいいというものがあったそうです。
それが刀。
刀は武士の魂だからです。
一方、知的生活には本は欠かせません。
即ち知的生活人にとって本は魂なのです。
つまり本や書斎には、いくら贅沢しても許されるという論理が成り立ちます。
知的生活を中心とした「人生の第3ステージ」を意図している私も、今後堂々と本三昧の贅沢ができるというものです。