身につまされる講演

野口誠一さんの講演を聞きました。
昭和5年生まれということなので、渡部昇一さんや竹村健一さんや日下公人さんらと同じ年。
なぜか昭和5年生まれは知的リーダーが突出して多いように思います。
この年代のオピニオンリーダーたちがいなくなると、次はどの年代が主流になって日本を引っ張っていくのでしょうか?

昭和5年生まれの人たちは「明治の元老」という感じがします。
元老たちが健在なうちは「富国強兵」へ向けて日本は確実な歩みをなしていたのですが、元老がいなくなると軍の暴走が始まりました。
次のオピニオンリーダーは昭和30年代生まれから出てくるような気がします。
団塊の世代は案外大したことがなかったように思います。

野口誠一さんと言えば「倒産」のセミナー。
25年ほど前にも講演を聞いたことがあります。
ありがたいことにこの25年間倒産せずにきたわけですが、前回と同じように身につまされながら話を聞いていたので、内面的にはあまり進歩せずにきたとも言えます。

野口誠一さんは昭和52年にドルショックと放漫経営で会社を倒産させました。
どんなに時代が変わっても倒産の原因は同じ。
またどんなに時代が変わっても再起の原因も同じだとのこと。
すべての倒産は「高慢」から生じ、すべての再起はそれを取り除くところからスタートしているというのが、野口誠一さんの話を聞いてよく分かりました。

野口誠一さんは「経営者の役割は会社を潰さないこと」と言い切っています。
失敗する人間の共通点はバランスの悪さなのだそうです。
経営のバランスは「カネ・体・心」。
儲からない会社はやめた方がいいし、いくら金持ちになっても突然潰れることがある。
食品疑惑のように人をごまかす商売をする人もいる。
倒産者には危機感がないのも特徴。
倒産の1年前でも気がつかないケースがほとんどだそうです。

普段から人の話を聞かない人や師匠のいない人もダメなのだそうです。
「元気がない・やる気がない・根気がない」場合もうまくいくはずがありません。
会社を大きくしたから潰れたという例も多いのです。
注文が殺到し工場を大きくする。
人も入れる。
大邸宅を建てる。
そのまま順調にいけばいいのですが、そうはいかないのが世の中。
中小企業は5年に1度不況が来ると思っていて間違いがないそうです。
世の中の好況不況と、わが社の好況不況とは違うのです。

夫婦円満というのも「会社を潰さない」もしくは再起のためのカギだそうです。
仕事が好きで仕方がない、つまり自分の職業を天職として頑張っている人はやはり成功しやすいわけです。
「この商売は嫌いだけどやっている」のは、どう考えても成功しようがないではありませんか。

ある再建した人の話。
絶対カネは借りない。
絶対手形は切らない。
いざという時リストラは断固実行。
人が切れないばかりに共倒れするのです。
設備投資はあくまでも自己資金がたまってから。
儲かりすぎて不幸を招く人もいるのです。
ホリエモン漢検の場合がそれに当たるかもしれません。
儲けたら還元しないといけないのは、人智を超えた宇宙の法則なのかもしれません。

倒産する人のほとんどの家には仏壇がないのも特徴だそうです。
そういえば昔『日本の社長』という長寿番組があったのですが、それを長くやっていたレポーターが「成功する社長には一つだけ共通点があった。それは家に仏壇があること」と述べていたのを思い出しました。
目に見えない力が運をもたらしてくれるのでしょう。

働きすぎも遊びすぎも「多忙倒産」を起こす要因だそうです。
経営者なのに数字に弱い「どんぶり勘定」。
倒産の定番「公私混同」。
遅刻を許していないかどうか。
規律の乱れは倒産への第一歩なのです。
また“でたらめ”な家庭なのに会社だけうまくいくはずがないというのも、まことにごもっとも。
とても有意義な講演でした。