コツコツと累積経営を増やす

不動産仲介業は毎月毎月ゼロからの出発です。
これでは経営が安定するわけがありません。
モーレツな会社は社員の回転率が高いし、モーレツでない会社は収益力の低さに悩みます。
しかしながら不動産仲介業は取っ掛かりやすい事業で、ここを出発点に船出する会社も少なくありません。
優秀な人が一人で不動産仲介に打ち込んでいくのならば問題はないのですが、大勢の営業社員を雇い、広告費をバンバン使って事業を展開していくと、どこかで壁にぶち当たります。

一挙に営業社員が辞めたり、市況の変化で売上が上がらなくなったりすると、途端に具合が悪くなってしまいます。
営業社員に依存する仲介業から脱出しようとして、建売りやマンション分譲に移行するところが出てきます。
経営者が優秀であったり、勢いがあったりする会社ほど、その傾向が強いように思います。
ところがそこで成功をおさめる会社は、ほんの数社。
今まで数限りなく不動産会社の市場からの退場(倒産)を見てきました。

マンションデベロッパーなど、何度も何度も淘汰を繰り返しています。
分譲実績ナンバーワンだった会社すら、銀行管理や会社清算になるのですから、一息つく暇がありません。
逆に一息もつかず、即ちじっくりと考える余裕もなく、走りまわっているから具合が悪くなっていくのかもしれません。
会社は走り回らないと大きくならないし、いつまでも走り回っていると倒産の危険性がある。
ある意味、そこに「経営の妙」があるのかもしれません。

東京の不動産仲間のTさんからのメールです。
「仕事に対する取組みも、随分と落着いてきました。
モーレツに頑張った頃もありましたが、今ではマイペース。
いくら頑張ってもダメなときはダメですが、ゆったり働いても調子がいいときはいい。
所詮は生かされている存在に過ぎないと感じています。
規模を拡大しなかったからこそ、いま比較的ゆったりと経営できているようにも感じます」

「賃料も下がり、地価も下がり続けていますが、都心部にはビジネスチャンスがあり、追い風に感じています。
身の丈にあった範囲で、条件のいいものだけを仕入れることができるのは、いまのように不況だからこそだと感じています。
景気が良かった頃、都心部は大手不動産会社にシェアを奪われ、本当に苦労しました。
『専任を制するものが市場を制する』と教えられ、頑張ってきたのですが、地方と異なり、まったくシェアを取ることができませんでした。
競争があまりに激しかったからです」

「賃貸管理をコツコツと増やしてきましたが、これも経費ばかりがかかり、なかなか利益につながりませんでした。
早く一定のシェアを取ろうと頑張るとよけいに経費が膨らみ、経営を圧迫しました。
今でも売買仲介の受託で一定のシェアを取ることは至難の業です」

「マンスリーマンションという都心部ならではの賃貸方法が
出てきて、これが当社にはピッタリで、都心部でやってきたメリットを享受できるようになってきました。
賃貸管理と同様で累積経営ですし、賃貸管理のノウハウもそのまま継承できて本当によかったと思っています。
今後、いつまで安定した経営状態でいられるかどうかわかりませんが、会社の規模を拡大しなければ、ある程度の期間、安定経営ができるのではないかと感じています」

マンスリーマンションにも様々なノウハウが必要で、今からマンスリーマンションに取り組んで行っても、もう遅いと思います。
また少々のマンスリーマンションを運営しても「食べていける」ところまでたどり着くには至難の業です。
しかしながら街の不動産店が生き残るには「人手のかからない累積経営」しかないと感じています。
「経営に満塁ホームランはない」は日本マクドナルドの創業者の藤田田さんの言葉ですが、「これしかないと見定めた」累積経営事業を、いかにコツコツと増やしていくかが勝負なのでしょう。
牛の歩みは「ウサギの上場」よりもずっと安定していることだけは確かなようです。