日本の低い金利で「円」を調達し、それを海外(日本以外)の株などに投資したり、金利の高い通貨で運用したりする動きを「円キャリー」と言います。
その場合、円が国外へ出ていくものだから「円安」になります。
アメリカの投資会社が、本社の屋台骨が揺らぎ始めため大急ぎでアメリカへ逃げ出し、借りていた「円」を返済する動きが相次いだと思われます。
そうするとドルも円も高くなるという理屈が通るわけです。
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先日韓国へ行ったのですが、ウォンが猛烈な勢いで下がっていったのは、この10月からだということでした。
円に対し、ごく短期間で半分の値打ちになったわけです。
おかげでいい青磁の陶器が買えました。
私にとっては円高で「投機(とうき)」ならぬ「陶器(とうき)」というわけです。
韓国は外国からの資金が逃げ出し、株も下がり通貨(ウォン)も下がりました。
ウォン安なので輸出が増えるかと思えば、アメリカの不況で逆に減っているのです。
外貨準備高がなくなり、遂に債務国仲間入りをしてしまいました。
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債務国仲間には「大親分」がいます。
世界一の債務国はアメリカなのです。
ただしアメリカには世界からのおカネが集まって来る事情と、ドルを自国ですることが出来る特権があるため、今はむしろ「ドル高」なのです(対「円」を除いて)。
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通貨の値打は一度信頼を失うと、とことん下がっていくというクセがあります。
そりゃそうでしょう、誰もそんな通貨を持ちたいとは思わないからです。
外資はその国の経済が破たんに向かっていると見れば、猛烈な勢いで逃げていきます。
かつてロシアの経済危機の時(1997年)、1ルーブル400円だったものが、あっという間に1ルーブル2円にまで下がったことがあります。
円だって戦前は1ドル2円だったものが、戦争に負け1ドル360円にまで下がりました(当時はそれでもまだ高く、1ドル500〜600円が相場だと言われていたそうです)。
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アイスランド経済は病院の「集中治療室」に入っているようなものですが、その病院の経営自体が破たんしかかっている事態。
要はムチャクチャ。
日本は病み上がりで世間から隔離されていたため、悪性伝染病にかからなかった状態。
イギリスやスペインは、アメリカの住宅バブルよりももっと強力な「躁」状態だったものが一挙に「鬱」へ。
宴のあとの虚しさと厳しさ…。
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民主党オバマがアメリカ大統領に選出されました。
オバマ個人の傑出した資質はともかく、「物分かりのいい」アメリカで世界の秩序は果たして維持されるのでしょうか?
ロシアや中国や北朝鮮やイランや、その他の反米国がどういう反応を示してくるのかは未知数です。
またオバマは基本的には、金持ち層から貧困層に所得を再分配したいという思想の持主。
一種の社会主義的な傾向があるかもしれません。
それがアメリカのダイナミズムを削ぎ落す動きとなり、理想とは裏腹に、国の経済を大きくマイナスに持ち込む危険性があることを危惧します。
「黒人のリンカーン」や「黒人のケネディ」を目指しているのでしょうが、下手をすると「黒人のカーター」や「黒人のフーバー(無能な経済政策者)」となる可能性だってあります。
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今回の世界金融危機で、私自身にとって大変よかったことは「アメリカのやり方がベストではない」ことが分かったことです。
日本経済がなかなか浮上しない一方、アメリカ経済が上手くいっていたものだから「アメリカ方式絶対主義」がまかり通っていました。
肩で風を切ってきた感のある「グローバリズム」は、言ってみれば「アメリカイズム」そのもの。
ここにきて、そういった風潮に歯止めがかかりそうです。
アメリカの投資会社も格付け会社も、随分と「いい加減」なものであったことが、今になって分かってきました。
化けの皮が剥げたわけです。
もっと日本は自信を持って、わが道を進んでいくべきなのかもしれません。