金融危機とバブル

1987年の日本経済はバブルの最中だったのですが、アメリカでは10月19日に株価が暴落しました。
ブラックマンデーと呼ばれています。
(ちなみに1929年の大恐慌は「ブラックサースデー」)。
翌年の1988年には「ロシア危機」によりルーブルが暴落。
LTCMというアメリカのヘッジ・ファンドも破産。
LTCMノーベル賞受賞者を2人もかかえたヘッジ・ファンドで、最先端の理論を駆使していたはずでした。

ブラックマンデーから10年後、1997年には「アジア金融危機」が起こりました。
タイのバーツ危機から始まったのですが、インドネシアをはじめ瞬く間に周辺諸国に危機が拡散。
韓国なども国家破産の危機に瀕し、いくつもの財閥が崩壊しました。

そしてそれから10年。
今度は2007年にサブプライム・ショック。
アメリカ発の世界金融危機です。
どうも金融というのは10年ごとに危機を迎えるようなのです。
それから言うとこの次は2017年ということになりますが、今回の金融危機は規模や内容から言って相当深刻。
2017年まで引きずるかもしれません。
日本だって「失われた10年」の苦しみ抜いた経験をしています。

少なくとも日本では、サブプライム問題とは関係なく、不動産のミニバブル(ファンドバブル)が崩壊するところでした。
中国だってオリンピックの前に株価が暴落。
サブプライムとは関係がありません。
「中国の株はオリンピックまでは大丈夫」と誰しもが思い、「だったらオリンピックの前に売り抜けておこう」と、これまた誰しもが思ったからでしょう。

先日読んだ『マネー動乱』(田村賢司・日本経済新聞社・1,800円)に面白い話が書いてありました。
ウィルバー・ロスという人は日本ではあまり有名ではありませんが、アメリカでは目利きの投資家。
この人のエピソードです。
「2007年6月のある日のこと。
ニューヨーク市郊外のゴルフ場でプレーを楽しんでいると、キャディの一人が『相談がるのですが』と言いだしてきた。
その相談とは『アリゾナ州フェニックスに5戸のコンドミニアムを買って3戸売れた。残りも売るべきだろうか。それともローンを払い続ける方がいいだろうか?』。
キャディの給与で5戸ものコンドミニアムを遠く離れたところに買ったのにも驚いたが、『場所はいいのか。建物はどうだ?』と聞くと『行ったこともないから分かりません』との答」
まさにバブルの末期的症状の兆候。

ケネディー大統領の父親は莫大な財を築いたことで有名です(ちょっとワルだったそうですが)。
その彼にもこんな話があります。
靴磨きをしてもらっている間、靴磨きの少年がラジオ株を買った話をしたそうです。
これを聞いて「もう株はピークで、あとは暴落するしかない」と判断し、持っている株を全部処分し、1929年の大暴落には全く傷を負わなかったとのことです。
前回日本のバブルでも、崩壊前に不動産をすべて売却した人がいます。
バブル崩壊の前には必ずその兆候があるようで、それに気がつくのと見逃すのとでは、天国と地獄の差となってしまいます。