目指すは「人手のいらない累積経営」

不動産業界にいて先行きを勉強していると、今後の景況の悪化が予測されます。
これは私たちにとっては当たり前の前提なのですが、他の業種の人とお話していると、景気の悪化や不動産価格の下落を、ほとんど考えていないことに、逆に驚かされることがあります。
ひょっとしたら不動産業界は好況不況を占う最先端の業界なのかもしれません。

前回バブル崩壊でも、不動産業界が先行き不安で顔面蒼白になっている頃、他の産業はまだまだイケイケドンドンで、そのギャップのおかげで在庫が処分でき、会社を潰さずに済んだ経験があります。
不動産業でも仲介や管理の分野であれば、自ら不動産を売買することはあまりないのですが、投資や買取り転売だとどうしても不動産を在庫として所有する機会が増えてしまいます。
不動産は総額が張るし、ちょっとタイミングをはずすと売れなくなってしまうリスクがあります。

そういう意味でも、株の方がずっと売買はしやすい。
株なら「見切り千両」で損切りさえ覚悟すれば、たいていのものは売れますが、不動産の場合だと、本当に全く売れなくなってしまうことが“ちょくちょく”あるのです。
不動産の売却は一人買う人がいれば「売れた」となるわけですが、その1人がいなくなると、あとは誰も買わないというケースも少なくありません。
また最初の一人が一番高く買う人でもあります。

不動産業界の中でも、いま一番苦しいのがマンション・デベロッパーではないでしょうか。
供給過剰や購入意欲の減退などによる販売不振。
また原材料高による建築費の高騰。
融資が絞られてきていることも大きな衝撃。
仕入れた土地に建物を建築することは当分見合わせ、コインパーキングとして活用することを検討しているところもあると聞きます。
ファンドが勢いで買ったマンションを賃貸に回すものの、夜ほとんど明かりが付いていない物件も多いようです。
既に完成しているのに販売を全くせず、一棟丸々そのまま放ってある例を東京で2件も見ました。

わが不動産業界は「2勝8敗」、もしくは精々「3勝7敗」の業界ではないかと思います。
2〜3年よくて7〜8年悪い。
いかに好調時の波に乗るかを考えるのもいいのですが、いかに好不況に翻弄されないかを考えるほうが会社としては長持ちするようです。
で、結論は「人手のいらない累積経営」。
少なくとも当社はこの方向へ向かう腹積もりです。