首都圏を中心にミニバブルが不動産価格を押し上げたのですが、それを引っ張っていったのが「ファンド」。
ファンドにとっては「不動産は金融商品」。
外資のファンドから見れば、日本はカントリーリスクが少なく、東京の不動産はまだまだ安かったということなのでしょう。
また国内のREITにとっても「まずは商品を揃(そろ)えなければ」ということで、ビルやマンションを購入していったわけです。
あれやこれやで、一流のビルや商業地の価格は一挙に値上がりしました。
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私も前回経験したのですが、バブルの高揚感は一種の躁状態。
また打つ手がどんどん決まるものだから、いつのまにか「全能感」に浸(ひた)ってしまうのです。
人間が全知全能であるわけがないのですが、天はその傲慢さを許さず、バベルの塔ならずバブルの塔は崩壊する運命にあります。
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とは言え、ファンドが全部どこかへ消え去ったわけではなく、逆に日本の不動産に参入を図っているファンドもあるわけです。
今ファンドが求めているのは、都内限定で100億円以上の大型物件。
反対に売りたがっているのは、地方の物件全部と聞きました。
東京以外の都市では、これから売りビルなどがどんどん出てくるのではないかと思われます。
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東京でもマンションの完成在庫は3万戸もあると言われています。
この在庫がなくならない限り、新規の販売に弾みがつくはずがありません。
この供給過多と景気の先行き不安感とが入り混じり、ここ当分の不動産市況には厳しいものがあります。
だいたいが株価が上がらないと気分も上がりませんよね。
一方で販売不振、もう一方で建築費の高騰。
全く逆のベクトルが働いているわけで、これでは動きが取れません。
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前回バブル崩壊の時も「半年先には回復する」などと安易な回復期待を持ちながら、結局そのまま10年間ずるずると下がりっぱなしで来てしまいました。
ここ数年は不動産市況や、あるいは日本経済全体の転換期であるのかもしれません。
日本企業は苦しんで苦しんで企業体質を強化してきました。
昨年あたり、過去最高の利益を出したところが続出したのも、その努力のおかげだと思います。
今回の先行き不透明感も、案外日本企業にとっての大きなチャンスかもしれません。
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前回バブルの崩壊だって、アメリカの嫉妬をうまく回避させる役割を果たすための天の計画だったと言う人もいるのですが、案外そうかもしれません。
1980年代のアメリカ経済はガタガタで、日本があのまま突き進んでいたら、当然アメリカの経済覇権を脅かしていました。
アメリカは常に敵を持たなければ国家として成り立たない体質の国なので、イラク攻撃ではなく、日本がその対象になっていた可能性すらあります。
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夢物語を言っているわけではなく、実際にこんな話があります。
第一次世界大戦が終わり、ある皇族の方がヨーロッパへ遊学に行きました。
皇族なので、現地でもそれなりの人たちとの交流が合ったのですが、その時に「アメリカは太平洋を突き進んで中国に進出したがっている。そのためには日本が邪魔だ。だから日本と戦争したがっているが、お国は大丈夫か?」と何度も聞かれたそうです。
その皇族の方が日本に帰った際、ヨーロッパでそんな話があったことをまわりに伝えたのですが、聞いた人はみんな「そんなバカな」と一笑に付していたとのことです。
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マスコミなどは日本の悪いところばかりを声高に取り上げる傾向があるのですが、海外では日本や日本人の評判は相当高くなっているようです。
大きく長い目で見たならば、日本に有利な方向へ時代と世界が動いていることを私は確信しています。
とは言え、ミクロの会社経営の分野でも成功を重ねていかなければいけないわけで、経営に意識を集中していこうと考えています(会社経営を始めて27年間ずっと同じ姿勢ではあるのですが)。
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まずは会社を身軽にする。
身軽にするとチャンスがやって来る。
あるいはチャンスが来たときに、身軽だとサッと動きやすい。
今年いっぱいじっくりと構え、実力を養う。
不動産の知識だけではなく、目利き力も。
引き続きコストダウンに知恵を絞る。
キャッシュポジションを高めておく。
3年後、5年後のわが社をイメージする。
既存事業の将来性をしっかり見極める。
とりあえず、こんなとことから始めてみようと思っています。