真理はシンプル

『タクシー王子、東京を往く。』(川鍋一朗・文藝春秋・1,350円)は、タクシー会社「日本交通」の再建に打ち込んでいる3代目社長が、自らタクシー運転手としてハンドルを握った経験を書いたものです。
乗ったお客さんから社長だと見破られたり、偶然に知人が乗り込んできたり、売上げに一喜一憂したり、人馬一体ならぬ「人車一体」のドライバーズ・ハイ(ランナーズ・ハイと同じような意味)を味わったりと、わずか1ヶ月の乗車にもかかわらず、様々な体験が面白く書かれています。

私が一番学んだのは、どんな仕事でも体調を整えることがまず基本だということ。
著者の場合も、飲みすぎた次の日にタクシーの中で睡眠を取らざるを得ず、売上げにも影響しています。
タクシーの売上げを上げるために、いろいろなテクニックもあるようですが、結局は間断なく街を走るということに尽きるようです。
そのためにも十分に睡眠を取り、心身ともに最高の自分を維持していくこと。
羽目を外さず、ストイックにやるべきことと、やらざるべきでないことを、きちんと日々の生活の中で遂行していくのは、簡単そうに見えて案外難しい。
逆にそれが出来れば、人生の成功者になるのもそう困難ではない。
やっぱり真理はシンプルなのです。

生活が乱れていて、まともな仕事が出来るわけがないのです。
経営者の場合は見事にハッキリした結果が出るので、ごまかしようがありません。
「この人は随分ムチャをやっているけれど、いつも羽振りがいいなあ」という状態も3年が限度。
あとは奈落の底というケースも何件も見てきました。

革新的なイノベーションを生み出す力はなくても、多くの人たちを引っ張っていくようなカリスマはなくても、「生活を正す」くらいなら自分にも出来るかもしれません。
「だらだらとムダな時間を過ごさない」や「食べ過ぎない」や、あるいはもっと精神的には「イライラしない」や「イヤなことを考えない」なども「生活を正す」の中に入ります。
極端な考えや行動を排し、中庸の生き方を。
中道は王道なのです。
生活を正し、時を守り、場を清め、礼を正す。
たったこれだけのことで、人生の勝利が待っているのだから、とてもカンタン。
あすからの自分の変身と人生の変化が楽しみではないですか。