不動産業でも様々な事業内容や営業形態があります。
広告をバンバン入れて集客し、追客していく営業手法の会社も少なくないのですが、見かけがハデな割には長続きしません。
物件の回転率よりも営業担当の回転率の方が高かったりします。
ノルマや歩合を言い出すようになると、成績本位の営業となり、制御が利かなくなってします。

強力な販売会社になろうとすると、どうしても優秀な社員が必要になります。
優秀な社員に育ち、会社に大いに貢献してもらおうと考えている矢先に、独立して元の木阿弥。
また営業社員の募集をしなければならない羽目に陥ります。
辞めることも計算して、最初から多い目に採用するというところもあります。
不動産業に関わらず、上場会社でも「強力な販売力がある」と言われるところは、多かれ少なかれ、このような傾向があるように思います。

「夜の10時より以前に帰宅する場合は早退届を出さなくてはいけない」なんていう会社もたまにあります。
営業特攻隊などと称して、猛烈な営業を朝から晩まで行なう会社もあります。
先物取引事務機器の会社から、このような営業攻撃を受け、迷惑を受けたこともおありではないでしょうか?
少なくとも街の不動産店で、このような営業形態を実施しているところは、じっと観察していると3年しか持たないようです(逆に3年ぐらいは持つようです)。
3年でガタガタになるか、ひどい時は倒産しています。

たまに猛烈販売会社のまま、上場まで突っ走る場合もあるのですが、上場してから相当体質改善が行なわれているようです。
いずれにせよ経営者が会社の規模に合わせて、どんどん自己変化する必要があります。
さもないと経営者の顔ぶれが変化、即ち交代ということになります。

不動産仲介業を行なっていて、社員が辞めたり、あるいは辞めさせたりを繰り返していると、なかなか会社が大きくなりません。
人事管理の限界を感じるわけです。
それを打破するために分譲業の方に移行する場合もあります。
物件の仕入れを社長が行っているうちは問題がないのですが、だんだん手を広げ、社長一人では追いつかなくなります。
そして社員が物件仕入を行なうようになる。
会社がおかしくなっていくのは、大抵その辺からです。
逆に物件仕入まで出来る社員は、独立しても食べていけそうな気がするものだから、あっさり独立。
「『ともに手を携えて会社を大きくしていこう!』と夢を共有し合ったあの誓いはいったいなんだったんだ!」と社長はがっくり来るわけです。
あとには不良物件と不良社員だけが残るというパターン。

やはり街の不動産店は累積経営に限ります。
コツコツと積み重ねの経営。
じっさい「猛烈販売型」と「累積経営型」とでは、その会社のトップの顔つきが違うのです。
圧倒的に累積経営型のほうが、穏(おだ)やかでいい顔をしています。
猛烈販売型だと毎月毎月ゼロからのスタート。
それに比べ累積経営型は何がしかの土台の上に、今月分を積み重ねていくことができます。

管理手数料をいただく不動産管理業も一種の累積経営といえそうです。
毎月安定したフィーが入ってきます。
ただ同じ累積経営であっても、極力オーナー側に回るべきです。
できれば自社所有が望ましいわけですが、サブリースでもO.K.
賃貸戸建てでも、マンスリーマンションでも、コンテナ倉庫でも、コインパーキングでも、とにかく自社が一番得意とする分野を早く見つけ、それに集中していくべきだと思うのです。

人に依存する事業は、これからの時代、街の不動産店がやっていくべきではないと考えます。
最後にこんなお話を。
経営コンサルタント一倉定先生がおっしゃっていました。
「『うちの社員には優秀な者がいない』と世の社長はよく文句を言うが、優秀な人間がいつまでもそんなボロ会社に勤めていると思っているほうがおかしい」。