豊かな時間で本筋を

渡部昇一先生の書かれている『昇一塾』からの受け売りです。
ローマ人の物語』全15巻を完成した塩野七生(しおのななみ)さんは、大学や研究機関に籍を置いているわけでもなく、いわば一介の主婦と言ってもいい存在。
それが並みいる大学教授が足元にも及ばない仕事をなしたわけです。
逆に言えば、教授たちはいったい何をしているのか?

塩野七生さんは、この15年間『ローマ人の物語』を書くこと以外は何もしなかったそうです。
朝起きると机に向かって5時間ほど執筆する。
あとは何もしない。
ボンヤリしている。
ブラブラしている。
考えてみれば、これほど贅沢な時間の使い方もないのではないでしょうか。

一つのテーマに集中する時、一番つらいのが時間をブツンブツンと切られること。
時間の余裕がなければ、例え才能と意志力と努力を兼ね備えていても、なかなか知的偉業を達成できないということでもあります。
生活に心配がなく、時間を自分のために自由に使える環境がどうしても必要になってくるわけです。
「持てる時間を自分のために自由に使う」は王者の贅沢。

私も「知的生活」に目覚めている割には、思うような活動ができていないのは、ひとえに「時間のブツ切り」をしているから。
小さな会社の経営でも、人並みに散々苦労しました。
従って、もうこれからは自分のために自由に時間を使っていっても罰は当たらないのでは、と勝手に思ったりもします。

人生の本筋に集中していかないと、すぐに日が暮れてしまいます。
もしこの先も、バタバタと“どうでもいい”仕事をこなすだけで、一生を終わってしまうのなら、悔いても悔い切らないのです。
人生の本筋とは何か?
もし3ヵ月後に自分の命が終わると分かっていてもやることが、人生の本筋。

朝の掃除は、私にとっては人生の本筋。
けっして時間のムダではありません。
掃除は、わが師鍵山秀三郎先生との唯一の絆でもあります。
仕事が出来る人たちが書く「時間の効率的使い方」的な本では、毎日2時間もの掃除は、けっして出てこない事柄でもあります。
ここがエリートと私の違うところ。

「超優秀な家内企業」にするための数々の経営技術の開発と取得。
これも本筋。
ちょっと外せません。
しかしほかの会社と同じようなことをして、やたら競争はしたくないですね。
いかに競合せずに、いい業績を上げていくか?
そこが経営手腕でもあるわけです。

で、3つ目の本筋が「知的活動」。
もっと言えば執筆活動です。
この時間を取るために、惰性の時間や世俗的お付き合いの時間をカット、カット!
大きな仕事をなすためには、小さな不具合は思い切ってカットなのです。
具体的な一例は「夜のお付き合いをやめる」。
本筋にのみ時間を集中させていく。
「体や会社を筋肉質に!」というのはよく聞きますが、時間も筋肉質にしなければ。